Software Engineerにお勧めの技術書
人に聞かれることも増えてきた昨今ですが、お勧めする本は毎年そう変わりはしないのでまとめてみました。言語に依存する本は、書き出すと多くなってしまうので除いてます。
コンピュータサイエンス関連のおすすめ本
Computer Architecture
大規模なシステムを組む場合、高い性能を要求される場合、省リソースが求められるケースなどは、特に低レイヤへの理解の必要性を実感することになります。
下のレイヤを深く理解しておかなければ、このようなシステムのアーキテクチャデザインやトラブルシューティングは実質できません。
- Write Great Code〈Vol.1〉ハードウェアを知り、ソフトウェアを書く
- Write Great Code〈Vol.2〉低いレベルで考え高いレベルで書く
- パタヘネ本を大学の時に読んでいたときには、その有り難みを半分程度しか理解していませんでしたが、このような本と一緒に合わせて読めていたら、もっと理解がしやすかったのにと思います。翻訳も素晴らしく全てのSoftware Engineerにお勧めしたい良書です。
- コンピュータアーキテクチャ 定量的アプローチ
- Scalabilityを求められるアプリケーションのアーキテクチャを検討するために、Computer Architectureを知っていることが如何に大事かというのを理解できるようになります。Architecture Designを定量的に行うために、このような本と最新のハードウェアの性能測定に基づいて大体の理論値を計算できるようになっておくこととても重要です。
- コンピュータの構成と設計 第4版(上) ハードウエアとソフトウエアのインタフェース (Computer Organization and Design: The Hardware/Software Interface, Fourth Edition)
- パタヘネ本。定番ですが読んでおいて損はありません。Write Great Codeと一緒に読むのがよいです。
- プロセッサを支える技術 −−果てしなくスピードを追求する世界 (WEB+DB PRESS plus)
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- 最新のプロセッサのアーキテクチャがどのようになっているのかを丁寧に解説しており、最近のプロセッサの全体像を把握するのに役立ちます。
OS/Linux Kernel
- The Linux Programming Interface: A Linux and Unix System Programming Handbook
- 詳解UNIXプログラミングの現代版ともいえる本です。まだ読み切れてませんが、非常に細かいところまで書いてあるので、レファレンスとして使っていこうと思っています。ちなみにebookで買わないと色々と大変です。
- Linux Kernel Development (Developer's Library)
- Kernel開発を本格的にするための本というよりも、最近のKernelの概要をコンパクトにまとめてある本です。DBエンジニアやDevOpsの人などが読むのに非常に適した本だと思います。
- Modern Operating Systems
Algorithm/Data Structure
- アルゴリズムデザイン
- 珠玉のプログラミング―本質を見抜いたアルゴリズムとデータ構造
- アルゴリズムとデータ構造が如何に大事かを様々なエレガントな解決策で提示してくれる本です
設計関連のおすすめ本
Software Architecture
- エンタープライズ アプリケーションアーキテクチャパターン (Object Oriented Selection)
- 言わずと知れたMartin Fowlerの良書。
- .NETエンタープライズWebアプリケーション開発技術大全〈Vol.5〉トランザクション設計編 (マイクロソフトコンサルティングサービステクニカルリファレンスシリーズ―Microsoft.net)
- トランザクション設計に関してこれ以上よくまとまっている本はないです。
- Transaction Processing: Concepts and Techniquesと合わせて読むのがおすすめです。
- Enterprise Integration Patterns: Designing, Building, and Deploying Messaging Solutions (Addison-Wesley Signature Series (Fowler))
- MQを使ったシステムのデザイン向けで他に類書があまりありません。MQ使われる方にはおすすめです。
- Distributed Systems: Principles and Paradigms
- 分散システムのアーキテクチャに関して幅広く書かれており、分散システムをデザインする人は必ず読んでおいたほうがよい教科書的な本。
- UNIXという考え方―その設計思想と哲学
と合わせて読みたい。Architectureという分類に入れるべきかは微妙なところもありますが...
Software Architectureを考える上で、Computer ArchitectureやArchitecture Patternだけではないというのは、企業で物作りをしている方は感じることがあると思います。以下の本は、Software Architectureをどのような視点で評価するのかということに対して、大局観を与えてくれるものです。
- Software Systems Architecture: Working With Stakeholders Using Viewpoints and Perspectives
- Documenting Software Architectures: Views and Beyond (SEI Series in Software Engineering)
- Software Architectureをどのような切り口で文書化したらよいのかについての指針を与えてくれる本。設計の文書化をする際に、設計の「思想」をまとめるにも、どのような切り口で書くべきかというのは常に悩ましいところはありますが、この本はそれに大してある一定の切り口を提示してくれている点で貴重です。
Design Pattern
GoFのパターン本以外にも読んでおくべきパターン本はあり、特にConcurrencyに関連する以下の本はおすすめです。
- Real-Time Design Patterns: Robust Scalable Architecture for Real-Time Systems (Addison-Wesley Object Technology Series)
- Lockに関するパターンなど、余り他の本には書かれていないパターンが書かれている良書。
- Concurrent Programming in Java™: Design Principles and Pattern (Java Series)
/ 増補改訂版 Java言語で学ぶデザインパターン入門 マルチスレッド編
/ Java並行処理プログラミング ―その「基盤」と「最新API」を究める―
- Practical UML Statecharts in C/C++, Second Edition: Event-Driven Programming for Embedded Systems
- 複雑な状態遷移をモデリングする際に役立つパターンがちらほらと。
Testabilityの高いDesignをするための本
Robert C MartinシリーズとMartin Fowlerシリーズを読んでおくのがおすすめです。
- レガシーコード改善ガイド (Object Oriented SELECTION)
- Dependencyの切り離し方のPatternのまとめが秀逸。過去の本をよく研究して作られており、コード例も比較的実践的な内容が多いため、あーこれはよくあるよねと納得しながら読むことができる。
- とても良くまとまっており、伊達にRobert C. Martinシリーズとして出版されていないなあといった本。
- Clean Code アジャイルソフトウェア達人の技
, 実装パターン
-
- CodingのIdiom系。1冊は読んでおくとよいと思います
- リファクタリング―プログラムの体質改善テクニック (Object Technology Series)
- 言わずと知れた名著。GoF本と同様に、パターン集的な側面が強いので、Refactoring to Patternsなどと一緒に読むと飽きずに読めると思います。
OOA/D
- アジャイルソフトウェア開発の奥義
- OODの原理原則が秀逸。Bob Martinの本と言えばこれ。Working Effectively with Legacy Codeを含め、多くの本に影響を与えているBob Martinの本。
- エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計 (IT Architects’Archive ソフトウェア開発の実践)
- 現実と乖離するところが多いと言われることのあるこの本ではありますが、当時OO厨な人は誰もが読んでいたこの本。1回は読んでおいて損はないと思います。
Developer Testing
- xUnit Test Patterns: Refactoring Test Code (Addison-Wesley Signature Series (Fowler))
- 若干内容が重複していて冗長なところはありますが、これ以上にテストのボキャブラリが充実したパターン本は無く、一読の価値はあります。
- Growing Object-Oriented Software, Guided by Tests (Addison-Wesley Signature Series (Beck))
- The Art of Unit Testing: With Examples in .net
- 上記の2冊はTDD本よりは例が実戦的で、新しく読むならTDD本よりこの本がよいかもしれません。TDD関連の本を幾つか読んでいればpassしてよいとは思います。
System Design (Scalability)
Scalabilityという切り口でまとめるのがよいか微妙なところもありますが、Web系システムのScalabilityに関しては、
以下の本がおすすめです。
- Googleを支える技術 ~巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)
- Googleの論文を丁寧に解説してある本で、当初読んだ時は感動しました。ある種の分散システムのデザインの指針となる良書だと思います。
- [Web開発者のための]大規模サービス技術入門 ―データ構造、メモリ、OS、DB、サーバ/インフラ (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
- タイトル通りですが、はてなの本で、広範囲にスケーラビリティに関連する話が書かれており、最初に読む本としては最適だと思います。
- スケーラブルWebサイト
- ハイパフォーマンスWebサイト ―高速サイトを実現する14のルール
- Front向けの性能チューニングで考えることがよくまとまっている。続編も合わせて読むのがよいです。
- Linuxで作るアドバンストシステム構築ガイド (18Network Server Construction Guide)
- Availability+Scalabilityに関するOSSの設定に関して非常に詳細に記述してあり、実践的で秀逸。
- オンラインゲームを支える技術 −−壮大なプレイ空間の舞台裏 (WEB+DB PRESS plus)
Webシステムのデザインであれば、上記の本を読むのでも十分得られることはあると思います。
この分野は類書は数多くありますが、幾つか上記の本を読んだら、分散システム, OS, Database関連の本やHPCの分野の論文などを良く読んだほうがよいです。
DB Design
データベースは、システム開発をする上では避けて通ることのできない分野です。DBはOSとStorageに強く依存しているため、DBのArchitectureだけでなく、ストレージ/OSのアーキテクチャも良く理解しておく必要があります。
- Database Architecture
- データベースパフォーマンスアップの教科書 基本原理編
- DBのArchitecture一般についての理論的背景について非常によく書いてある本。この本は、各DB固有のアーキテクチャの本を読む前に読んでおくのがとてもよいです。
- Expert Oracle Database Architecture: Oracle Database 9i, 10g, and 11g Techniques and Solutions
- プロとしてのOracle物理設計入門 増補改訂版 [Oracle現場主義]
- 実践ハイパフォーマンスMySQL 第2版
- Linux-DB システム構築/運用入門 (DB Magazine SELECTION)
- ストレージサブシステムとDBとの関係についてわかりやすく書いてある松信さんのMySQL本。松信さんの話は、この本だけでなく、その他のプレゼン全般でも、非常にストレージサブシステムへの説明が詳しくおすすめです。
- エキスパートのためのMySQL[運用+管理]トラブルシューティングガイド
- データベースパフォーマンスアップの教科書 基本原理編
データモデリングは、OOA/D と同じくかなり癖のある分野で、これがベストであるといいきれる本はないのですが、以下の本は総じておすすめではないかと思います。ある程度読んだら、キーとなるドメインの知識獲得のほうを大事にしたほうがよいです。
- データモデリング
- T字形ER データベース設計技法
- Entityをコードで認識したり、EntityをEventとResourceに分離したりなど、モデリング手法として勉強になるところはかなりありました。
- Data Modeling Essentials, Third Edition (The Morgan Kaufmann Series in Data Management Systems)
- アート・オブ・SQL ―パフォーマンスを引き出すSQLプログラミング手法
- 色々書いてありますが、モデリング部分は面白いです。
- 独習データベース設計
- 概念モデリング、論理設計、物理設計までの流れが非常にコンパクトにまとまっており、プロセスを学ぶという点では無駄の無い本。
- T字形ER データベース設計技法
- SQL
/達人に学ぶ SQL徹底指南書 (CodeZine BOOKS)
- その他
- データベース・リファクタリング
- 若干粒度が細かいといえば細かいのですが、類書はなく一回読んでおいて損はないです。DBエンジニアの人にとっては当たり前なことも多いかもしれないんですが、AP開発者の人がDB設計を改善する際には役に立つと思います。
- データベース・リファクタリング
System Administration
以下の本は、純粋な運用に関する話ではなく、死活監視、測定、配備といった最近のDevOpsに求められる分野を網羅的にまとめている良書です。DevOpsの人だけでなく、AP開発者の人もAPを作る上で運用が可能なアプリケーションとはどのようなものなのかを意識するのにも役立つのではないかと思います。運用も含めた全体のシステムデザインが、昨今の大規模なクラスタではとても重要です。特に、クラウドインフラが増えていき少数のエンジニアがその上でアプリケーションを開発するようになっていく時代には、AP開発者であってもインフラの基礎知識を持っておくことが今後より重要になっていくでしょう。
Software Engineering系のおすすめ本
Agile
Agileの本は色々でていますが、基本的にはMike CohnとJames O. Coplienの本を読んでおけば大体間違いないです。
僕の場合は、Scrumをベースにした開発プロセスで大体のプロジェクトは進めています。
- Succeeding with Agile: Software Development Using Scrum (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))
- User Stories Applied: For Agile Software Development (Addison-Wesley Signature Series (Beck))
- Agile Estimating and Planning (Robert C. Martin Series)
- Lean Architecture: for Agile Software Development
- アジャイルサムライ−達人開発者への道−
- 後発だけあってよくまとまってます。今からならこれから読むとよいかもしれません。